NHKスペシャル とかれた封印をみて①
中間子理論の湯川秀樹さんは「真理の追究は常に少数派から始まる。それが正しければ多数派に移行する」といいました。
先頃、米軍カメラマンが撮った写真が公表されました。その30枚の写真の中の一枚に、三歳くらいの弟を背中におんぶしながら 唇を噛みしめて佇む七歳か八歳くらいの半ズボンに坊主頭の少年が写っています。それは長崎の原爆で亡くなった幼い弟の亡きがらを背負い、火葬場の前に立つ少年の姿でした。少年の唇には血が滲んでいたと言います。
長崎の原爆の後 、許可無く日本人を撮ってはいけないという命令に背き、本国にフィルムを持ち帰ったカメラマンの63年前の真実は全米にショックを与えました。しかし、その公表に至る迄には63年もの歳月を必要としました。原爆投下を正義と信じる退役軍人からの非難と中傷。カメラマンは妻と離婚してまで真実を遺す運動をはじめました。
虐めた加害者は忘れる為に痕跡を消したがる。しかし、虐められた被害者は忘れたくとも忘れることが出来ません。たった三〇枚の写真が雄弁に真実を語っている。歴史は勝者が書いた物で、そこには隠したい真実が消されている。故に、隠したい虐めこそ本当の歴史であると想いました。私は戦争を大きな虐めとしか捉えていません。