サンデープロジェクトを見て④
前回の補足をしたいと思います。
火垂るの墓というアニメがあります。野坂昭如さんの自叙伝でもあるらしく、毎年8月になると、何処かのテレビ局が必ずといってよいほど放映します。
私の書いた小説、『大泉総理と風子さん』の中でも出てくるのですが、2001年のハリウッド映画『パールハーバー』は記録的ヒットをしました。無論、日本の奇襲攻撃を描いた日本人を鬼とした作品でしたが、近年ではNSA(国家安全保障局)という、CIAよりも古い組織が、当時のモールス信号を悉く解読し、ナチスドイツの動きも、日本の陸軍、海軍の動きは、無論『ニイタカヤマノボレ ヒトフタマルハチ』も全て解読されていたというのが、近年になって、明らかになりました。
つまりホワイトハウスは事前に、奇襲攻撃のパールハーバーを知っていたとする論証です。さて、2001年の同時期に、『火垂るの墓』も全米に上陸していましたが、上映禁止になりました。日本に対し『日本人よ、パールハーバーを思い起こせ(リメンバー・パールハーバー)』というわけです。世界一の民主国家の裏面は戦略国家であるという忘れてはならない側面があります。
さて、中谷さんは日本を下記のように評しました。
先進7ヶ国とは⇒日米英仏独伊とカナダです。日本以外の米英仏独伊とカナダは全てキリスト教の国。非西洋、非キリスト教圏は日本だけである。日本は 縄文時代から1万2千年も一国家一文明の国であった。 中国は北方騎馬民族との戦いにあけくれ、アメリカは移民国。ヨーロッパは民族抗争の歴史の国であることを考えると、日本は特異であり特別な国家の成り立ちをしている。
そして、日本は階級社会の薄い国であると論じましたが、田原さんが「天皇制は日本の階級社会の象徴である」と反論すると、中谷さんは言葉を詰まらせてしまいました。ですから、私たちの世代になると、天皇制と戦争放棄の問題は、もうお手上げで大人達の意見が真っ二つに割れるので、その事には触れるのはタブーとなっています。今、一子相伝、世襲制、将軍職を継ぐ御三家のような内閣が続いていますが、私は、こちらの方が天皇制をを階級社会制度という以上の大問題だと思っています。
櫻井さんが「武士道は自然発生的に起きた国体である」と言っていました。同様に天皇制も自然発生的に起きた秩序・体系だと考えます。その根拠は、天皇が戦国時代であっても、その職を信長にして奪わなかったという希有な国であり、意識を持っていたという事です。天皇を安土桃山城に招いたとき、信長の天守閣の下にくるような構図をしていたという話しを聞きましたが、天皇になろうとした形跡はありません。
これは中国にはない現象です。中国は戦で天下をとったものが、国名を変え、年号も改め、皇帝に君臨します。しかし日本はナンバー2までは目指しても1は目指さない。しかも天皇は武力をもっていなかったことを考えると、そこに尊敬する何かがないと、そうした現象は起きないと思っています。私見ですが、例えば飢饉の時代に稲作を奨励し、人々が飢えから逃れる事が出来たと考えれば、武力によって認めさせたのではなく、知恵によって人間の本能である食欲を満足させてくれたので、その人を立てたと考える方が自然ではないでしょうか。
『武によって立つ者は武によって滅ぶ』という鉄則は、『武に寄らずして立つ者は、武によって滅ぼされない』という法則にもなると思います。
新古今和歌集で仁徳天皇は「高き屋に のぼりて見れば 煙たつ 民のかまどは にぎはひにけり」と詠んでいます。現代流に言えば、人家の竈から、炊煙が立ち上がっていないことに気付いて、税を免除し、宮殿の屋根の皮さえ吹き替えや無かったという説もあるほどです。民の生活はどうかとおもって高台から見てみたら、どの家からも煙がでていたので、一安心したという意味です。つまり国民は天皇を思い、天皇は国民を思っていなければ、出来ないと考えます。
政党も天皇制と憲法九条を切り口にすると明確に済み分けられ、天皇制維持、憲法改正の自民党与党から、民主党に代表されるように天皇制は棚上げ、憲法護憲、自衛隊は国連へという流れに転換しつつあります。仮に国連から自衛隊を管理下に置きたいといってきたら、日本は無防備になり、女王蜂が女王蜂でいられるのは、兵隊バチ、つまり武士集団が周りを固めていたからであって、天皇制の崩壊に繋がっていくと感じています。