漢字④
諸子百家とは中国、春秋戦国時代に現れた多くの思想家および、その学派の総称ですが、数多くの学派が違う漢字を用いて独自のテキストを構築していました。だから現代の中国人も論語は読めないそうです。一つの字、例えば、つるぎの「けん」という字は今でこそ「剣」という一文字ですが、当時は幾つもの字体があった。文字=政治集団でもあったんですね。
それを秦の始皇帝が焚書を命じ、民間の書物を没収して焼却、書物の私有化を禁止し、3300の文字のみを認定し字体と発音を統一。中国で唯一のコミュニケーション手段の公開と国有化して今の中国語に連なるようになりました。
という訳で、漢字というのは漢族が作ったのではなく使っていたもの。始祖はおそらく東南アジア、今のベトナムで、今の中国人とは関係ない。例えば、ユダヤ人というと、一番有名なのはアンネ・フランクでしょうか。ドイツ人というかアーリア人は金髪に青い目で長身である。それに比べてユダヤ人は黒髪であるというイメージですが、では何をもってユダヤ人というか。それは、そもそもはユダヤ教を信仰する者、或いはユダヤ信者を親に持つ者である。それと同じで漢族という血族集団ではない。
ちなみに何故そういう風になったのか。19世紀末から“日本人は皆、遡れば天照大神(アマテラスオオミカミ)の子孫である”という考え方が出てきました。これにならって中国人は“漢族は全て神話の帝王、黄帝の子孫である”とした。この黄帝の子孫こそが中華民族で漢族だという概念が初めて出てきた訳ですが、それまで人々に同一民族という意識はなかった。あくまでも異なる言語の代わりに漢字という表意文字のコミュニケーションが通用するのが中国文化圏であり、それに参加する中国人だった訳ですね。