<『小さな親友』という小説を投稿しました。④>
結局、人生とは出会いで決まるのかな、と考えています。
例えが悪いのですが、良い例がないので、パチンコを例にしたいと思います。でも私はパチンコをしたことがありません。そう決めているわけではなく。考えてみたらそうだった訳です。
パチンコの玉が主人公で、釘が出会う人です。どうも例えに品がありませんが、やっぱり分かりやすいので、そうしたいと思います。そして出会う釘と言う釘が右に弾けば、玉は右に、反対なら左です。名前はなんというのか分かりませんが、最後まで落ちないで、玉が出る仕掛けの処が就職だったり、結婚だったりします。
すると人生が一旦クリアになって又、アッチへこっちへと影響を受けながら人生が決まっていきます。私は、そう捉えています。
結局、親も配偶者も子どもも兄弟も選ぶことは出来ません。出会い、そのものです。しかし、出会いの裏側は別れです。出会ったときは、自転車で行ける距離、しかし、引っ越した小学6年の裕太にとって、電車三本とバスの距離は余りにも遠く、大好きな小父ちゃんと滅多にあえなくなりました。
それで二人は、ケータイで近況をメールしていたのですが、メールの返信が、ある日からなくなりました。裕太が一人住まいの筈の小父ちゃんの家に電話をすると、女性の声がして、石川哲弥(おじちゃん)は死んだというのです。
裕太は突然のことに思わず電話をきり、後ずさりします。しかし、意を決して、もう一度電話すると、違う人が出て、今夜が通夜だと言います。
カン、カン、カンという音が辺りに響き、踏切の遮断機が下りた。東京郊外の五日市線のホームに、西日を浴びた電車が滑り込んできた。電車のドアが開くと、少年が脱兎のように車内から飛び降り、階段を駆け上り駆け下り疾風のように改札口を駆け抜けた。西日が少年の右の頬を照らすと、その頬にキラリと光るものがあった。懐かしい筈の光景が、大きな親友と歩いた町並みが、怖く感じられてならなかった。
「小父ちゃん、小父ちゃん!」と、やり切れない切なすぎる思いを叫びながら、少年は走り抜けていく。驚いて足を止めた人々は少年の前方を見たが、それらしき人物は見あたらなかった。
少年は目的地に近づくにつれ、不安が募り静かに歩きだしていた。やがて、見覚えのある民家の前に着くと少年は顔を上げた。東京郊外の五日市の更に山の方に立つ一軒家の門には、『石川哲弥葬儀会場』と書かれた看板が立っていた。それを見た少年の目に涙が溢れた。
「……小父ちゃん。本当に死んじゃったの」そこは、少年の知っている家ではあったが、誰かが知らぬ間に占領して、勝手な事をしていると思うほど様子が変わってしまっていた。少年の心に、冷たい風が吹き始めた。中の様子を窺うと喪服を着た人達が行き交っている。少年は思わず、自分の服装を見た。白い半袖シャツに半ズボン。場違いだと思い知らされた。でも帰る訳にはいかない。世話になった大好きだった小父ちゃんとの別れだと思い、少年は人目を盗んで庭の木の陰に隠れると、見つからないようにしゃがみ込んだ。
庭には受付の机が置いてあり、そこには厳つい顔の男が来て座っていた。まだ、時間が早いのか弔問客は来ていないようだ。すると、厳つい顔の男に
「篠原さん、葬儀屋さんが話したい事があるそうです」と声が掛かり、男は分かりましたと言って立ち上がった。少年は忍び足で受付に行くと、香典袋を置き、直ぐに踵を返して再び木陰に隠れた。
「小父ちゃん。少なくて、ご免なさい」と言いながら少年は手を合わせた。
という書き出しで始まっています。