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<作家への道②>

 村上春樹さんのノルウェイの森のなかで、姉の縊死を見たとき、妹は、何故、姉さんは背が高いのだろうと思ったという言葉で全てを語っています。(「告白(湊かなえ著)」という本を読みました。①⇒09/6/26)


が、実際に縊死は、穴という穴から内容物が出て、異臭の凄さは凄まじいものがあります。私の知り合いから聞いた話ですが、お爺さんが縊死をして、後に、お婆さんと孫がそれを帰宅して見るのですが、二人とも10年経ってもトラウマです。

 まして、家族、一行で綺麗にして終わる件が、私には理解の外で、純文学が苦手な所以です。例えば、文芸評論家の目黒孝二さんは、本の雑誌社顧問で、月に50冊は本を読むという人です。全世界で800万部売れているミレニアムと言う大ベストセラーは読んでいてミレニアムを絶賛しているのに、村上さんの1Q84は読んでいないと聞くと、おかしいな、読んだけど、評論の食指が動かないので、読んでいるのに、読んでいないと言っているのではないかと思ってしまいます。

 つまり、そういう点では、私の頭は素直に受け取らない分、推理小説の頭に近いのかなと想っています。何の宣伝もしないで出せばベストセラーですから、これは現在の大特長で、人気があるという事は実力であると勘違いする事です。例えば、政治力とは観察しての判断力、洞察して決断力。これらを総合した精神力で、『座して国家百年の計を立て、千里の外に勝敗を決する』というものです。

 これに一番近かった政治家は、池田勇人首相で、三大景気、神武景気岩戸景気いざなぎ景気の真っ直中の中心で渦中の人物でした。しかし、人気があるかという事になると、話は別です。小泉さんの方が遙かに、人気はあります。当時の自民党のマニュフェストは郵政民営化で、小さな政府。少子化対策、官のリストラ。年金医療の社会保障が充実。戦略的外交も推進というものでした。

 でも、たった4年で、これこそが諸悪の根源で、郵政関連政権の小泉、安倍、福田、麻生の9年間で、バブルで失われた10年から、更に10年が加算されました。その前の『今太閤』と言われた田中角栄さんも人気のある人でしたが、狂乱物価の政権で、日本列島『日本列島改造論』は今や、早くも時代の遺物で、今の時代はネット時代で、わざわざ遠出しなくても、スーパー銭湯で、どのような温泉でもブレンド出来るので、湯治のような旅行はなくなりました。

 何処へ行っても町並みは同じです。同じコンビニ、同じスーパー。森田知事がアクアライン2320円を800円と3分の一にしましたが、果たしてどうでしょう。何しろ通行量が3倍になってツーペイですから。つまり田中角栄さんは当時、コンピュータ付きブルドーザーと言われたそうですが、30年先の未来は読めなかったようです。

 話は戻って、村上さんの小説について、山田詠美さんという女性作家は、こんな風に批評していました。(要約しています)

 モテない男が、ある日突然、プラットホームで女に声を掛けられる。「アンタ、私の昔の彼に似ているのよ」持てない男はドギマギします。あり得ない事は、一度はあっても、二度は続きませんと古畑任三郎さんなら言うところなのですが、そのありえない現象が続いて、プラットホームの女から、連絡が頻繁に入るようになります。そこから、その男は、俄に持て始め、違うところでも、又、声を掛けられ、整形もしていないのに株価が急上昇するようにモテまくります。

 そうして居る時に、最初の女が、傷ついて縊死したりしてしまったりして、それから男は罪人のように悩んだりしますが、勇気づけてくれる女が現れたりします。つまり男は、何の努力もしないのに主人公になっているわけです。誰もが努力しないで良くなる夢を、小説は実現しているわけです。

 その色彩が推理ものにも出てきて、ドラマティックにすると辻褄があわなくなる。そこの辻褄合わせが作家の腕の見せ所なのですが、それも消え失せつつあるのかも知れません。松本清張さんなら、俺の苦労は報われないというかも知れません。

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