斎藤元章著 エクサスケールの衝撃③ 食糧自給率が100%に
<p><p>エクサスケール</p></p>
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斎藤元章著 エクサスケールの衝撃① スパコンによる新世界の幕開け
前回はエネルギーが最終的にフリーになると結んだ。エネルギーがフリー、又は極端に安くになると今度は食糧問題が解決する。
何故なら「植物工場」で安定した食糧供給が可能になるからだ。「植物工場」とは畑やビニールハウスで栽培するものと違い、施設内で植物の生育環境を完全にコントロールし高度な環境制御と生育予測によって野菜等の植物の周年生産や計画生産が可能な栽培施設の事である。
植物工場のメリットは様々であるが例を上げると以下のものがある。
・生育期間の大幅な短縮による多期栽培を可能にする。
・短い生育期間でありながら収穫量を最大化出来る。
・植物に与えられる外的ストレスがなくなり品質や見た目が向上、安定化し鮮度が長く保たれる。
・養液と光源の性質制御によって特定の栄養素を増強した機能性野菜が栽培可能になる。
まさに良いことずくめであるが最大のデメリットが莫大な電気代である。常に環境を制御するため大量の光源や光源の冷却装置、空調や栽培の為のクリーンルームの維持費にかなりのコストがかかってしまう。
しかしエネルギー革命で電気代が無料、又は極端に低下すればこのデメリットは一気に解決される。更にエクサスケールコンピューティングによる研究開発により、既存の物より遥かに効率の良い大出力の出るLED光源や新光源の開発が成され、食物を遺伝子レベルで解析することで上記に上げたメリットを極大化出来る。その結果なんとコメの12期作すらも可能になってしまう。
この「植物工場」の一番の利点はどんな地域にでも設置が出来ることで極端な話都市部のオフィス内でも栽培でき、また耕地面積も立体的に積み上げていくことで必要な分だけ確保出来る。そして畑を耕したり雑草を除去したりといった人間の手間が一切かからないから、コンピュータ制御による単純作業をロボットにやらせるため維持運営のコストが殆どかからなくなる。近い将来、植物全般をタダで作れることになるのだ。
「植物工場」の魚版、畜産版も既に研究されており生態系を壊さず病気や抗生物質を一切摂取しない無菌な畜産も作れる。エクサスケールコンピューティングにより植物、魚介類、肉畜、食鳥、その他全てが交配操作、遺伝子操作がより安全、より効果的に行われ、短期間で収穫量が多く味、見た目も良く、品質が高く安定した品種が次々に生み出される。尚かつその生産効率は現在とは比較にならないほど高められる。更に凄いのは将来的に「植物工場」が小型化され各家庭に一台「植物工場」を設置することが可能になることだ。何もしないで自給自足が出来てしまう。
遂に食糧問題が解決され最終的にはエネルギー同様「食」すらも無料、フリーになる日が来る。食がフリーになると衣類もフリーに、そして土地すらもフリーになっていく、つまり人間が生きていく上で必要な「衣」「食」「住」全てがフリーになるのだ。詳しくは本書を読んで頂きたい。
次回 斎藤元章著 エクサスケールの衝撃④ 働く必要のない世界