ポーランド総選挙 グローバリズムの敗北
【ワルシャワ=井口馨】ポーランド総選挙(上院100議席、下院460議席)は25日、投開票が行われた。
国内メディアが伝えた出口調査結果によると、中東などからの難民受け入れに反対する保守系の最大野党「法と正義」が圧勝する見通しで、8年ぶりの政権交代が確実となった。
現在、世界的にグローバリズムとナショナリズムの衝突が起こっている。グローバリズムとは難民、移民問題を始め日本でいえば新自由主義に基づく業界の参入規制緩和(農協改革や発送電分離)、労働規制の緩和、TPPといった既存の制度を破壊しそこの業種に新たな勢力が参入する構造改革、そして緊縮財政、この全てがグローバリズムに通ずる問題である。
このグローバリズムに基づき国家同士の集合体を結成したのがヨーロッパ連合(EU)だった。しかし結果を見れば明かなようにギリシャは毎年破綻寸前、スペインの失業率は20%以上、フィンランド、デンマークオランダ、フランスどこを見てもドイツ以外は不況に喘いでいる。ヨーロッパ各国が通貨を統一し国境という概念を取り払う。まさにグローバリズムの完成で素晴らしい世界がやってくる筈だった。では誰にとっての素晴らしい世界だったのか、それは一部のグローバル投資家、グローバル企業に他ならない。GDPに占める輸出の割合が4割のドイツはユーロが安くなればなるほど他のEU諸国、中国、米国にどんどん輸出を拡大し大儲け出来る。儲けているドイツのグローバル企業にグローバル投資家は目を付け更に投資を拡大する。ドイツ国内ではグローバル企業の利益拡大が計られより安い労働力のため移民を大量に受け入れている。 移民政策に構造改革による各種参入規制緩和、更には極端な緊縮財政を続けた結果、ドイツの貧困と格差は拡大し貧困率は15%、1000万人以上のドイツ人が苦しい生活を余儀なくされている。
グローバリズムは一部のグローバル投資家、グローバル企業だけが儲かり国民は富を奪われていくだけ、ヨーロッパ各国の国民にグローバル企業の富は分配されない。しかしそれがグローバリズムの本質であり新自由主義に基づく正当な結果なのだ。国内の人件費が下がれば下がるほどグローバル企業はグローバル市場での「競争力」が増し利益を得られる。一方で人件費を下げられた国民は自由競争なのだから学歴や特殊な技能を持たない弱者が安い労働力としてこき使われるのは仕方がない。その仕事にしかつけない方が悪いのだ。嫌なら仕事を辞めろ全ては自己責任、敗者は黙って強者に従えということだ。
日本も同じ労働者派遣法の改正、技能実習生という名の外国人移民、緊縮財政でデフレが促進されブラック企業が未だに跋扈としている。グローバリズム、新自由主義に未来はない。正しいデフレ対策で政府の支出を増やし規制は強くしなくてはならない。
「世界はグローバルの時代だ! 日本もこの流れに従わなくてはいけない」
こんな戯れ言に惑わされこのまま日本のアメリカ化(グローバリズム化)が進めば格差と貧困は更に拡大し日本国民は苦しむ事になる。グローバリズムが如何に国民経済に適っていないかはこれまでの失われた20年、世界的にいえばレーガノミクス、イギリスのサッチャリズムで全て証明済み、日本が再び経済成長を果たし国民経済を豊かにする為にはナショナリズム(反グローバリズム)が必要だ。