「HERO」を読んで⑥
政は名実ともに秦の王となると、もはや一刻だけでは飽き足らなくなります。
他国の王を滅し、唯一、自分が絶対者になろうとしたのです。他の6国(当時の中国は秦・趙・韓・魏・燕・楚・斉が割拠していました)は連携し秦の攻撃計画を練ります。しかし、それを知った政は些かも動揺しませんでした。その時、既に彼は誰にも心を開かなかったのです。人付き合いはせず、自分の理想は自分だけが分かっていればよいと着々と戦いに勝っていきます。
彼が30歳の時、目的はあと一歩のところにまで迫りました。秦は連勝し6国は一掃されつつあったのです。しかし政は一抹の不安を覚えます。秦以外の6国を敵に回しただけでなく国内にも謀略の陰が見え隠れしています。いうなれば四方八方を常に敵に囲まれ、いつ殺されてもおかしくない状況になってしまったのです。
映画では、この部分は語らずに、いきなり無名という男が政の命を狙う刺客を倒したというところから始まるのですが、この部分を読んだ事でより理解が出来ました。