斎藤元章著 エクサスケールの衝撃④ 働く必要のない世界
<p><p>エクサスケール</p></p>
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斎藤元章著 エクサスケールの衝撃① スパコンによる新世界の幕開け
これまで書いてきた「衣」「食」「住」全てがフリーになった世界においては生活の為に働く必要のない社会が実現する。人件費がタダになることと「衣」「食」「住」がタダになるということは表裏一体、不離一体であり、お互いがそれぞれの前提条件になっている。「衣」「食」「住」をフリーにするには人件費がタダになることが必要であり、人件費をタダにするためには「衣」「食」「住」をフリーにしなくてはいけない。生活の為に働く必要のない社会を実現する過程で「衣」「食」「住」を保障しそれまでの労働を無給で行っていく必要がある。
一定量の仕事をタダで行う人には「衣」「食」「住」全てをタダにするという条件で人材を募集し働いて貰うことで、人件費がかからない生産、建築、管理やサービスの提供が可能になり、その結果そこで提供された物やサービスを用いた次の段階では資材費、原料費、サービス費が全てタダになっていく。前回の「植物工場」を例にすれば、初期段階の設備投資や人間の介在は絶対に必要であるが、人間が必要な部分を機械化、ロボット化することで最終的には人件費のかからないフリーな生産が可能になる。
重要なのは「衣」「食」「住」の保障といっても今より遥かに高い生活レベルを維持出来るという点だ。それを条件に完全なる人の働く必要のない社会を構築していく、しかも仕事の内容も自動化やロボット化が急速に進むので今より遥かに楽になるのだ。これはよく出てくるロボットに仕事を奪われるといったような話ではなく人間の変わりに仕事をやらせることで、生産効率は更に高まり、それまで作れなかったもの、栽培出来なかったもの、得られなかったものが次第に得られるようになる。「衣」「食」「住」の質はどんどん改善されていき人間の労働時間も殆ど僅かなものになっていく、そして遂には「衣」「食」「住」のフリーだけでなく、娯楽、趣味、旅行、贅沢品と全てのものがフリーになっていくのだ。
こうして全てがフリーになっていけば貨幣の存在価値がなくなっていく、不労が実現すると共に貨幣経済も急激に縮小し別の価値観によって置換されるのは必然であり、人々は「お金」から解放され貧富の格差、階級といったものも自然と解消され理想的な社会が誕生する。
これがエクサスケールコンピューティングがもたらす社会の変革である。先ずエネルギーがフリーに、衣食住がフリーに、そして労働がフリーになり、これまでの社会構造、価値観、生き方を根こそぎ覆してしまう。まさに題名の通り「エクサスケールの衝撃」といって過言ではない。ここまで書いてきたことは決して絵空事ではなく実現可能な話だということを強調したい。私も最初は半信半疑であったが本書を読んで将来的に起こりえる世界なのだと実感した。しかもそれは早ければ後15年でやってくる。そのときこの世界は一体どんな風に変わっていくのか、明るい希望が見える反面、恐怖も感じるがそれはさておき次回はエクサスケールコンピューティングがもたらすもう一つの「不老」について
次回 斎藤元章著 エクサスケールの衝撃⑤ 人類が不老を得る日